そして一週間後の帰り道、また三ツ矢くんは少し前を歩いていた

今日は火曜日、先週も確か火曜日に見たんだよな

雨愛はまた勝手口から入ろうとしたが三ツ矢くんが右に曲がったので入るのをやめた

雨愛の家は晴輝が曲がったところにあるお寺だった

玄関はお寺を入って右手奥に家がある

いつも雨愛は家の裏側で道路沿いにある勝手口を玄関がわりにしていた

晴輝が気になったので雨愛はお寺の門をくぐった

(なんか尾行して悪いかな、自分ちだからいいよね)


晴輝は墓地のある左手に歩いていく

一つのお墓の前に止まってしばらく立っていた

(泣いてるのかな?)

雨愛はゆっくり近づいた

足音に気づき晴輝は軽く目をこする


「管野、どうしてここに?」

「帰ってたら三ツ矢くんがうちに入っていくのが見えたから……」

「うちって管野んちってお寺?」

「うん、そう」

「恥ずかしいとこ見られたな」


少し照れたように晴輝は下を向いた

「お墓参りは何も恥ずかしいことではないよ」

「……うん、そうだけど恥ずかしいのは涙を見られたからで……」



さっき雲っていた空が雨雲にかわり雨が降りだした



「こっちに来て」

雨愛は走って御堂に入った

「ちょっと待っててね」

雨愛は御堂から続いている廊下を小走りでかけていき、タオルを持ってきた



「これ、使って」

晴輝にタオルを渡す

「ありがとう」

タオルを頭から被った
ポタポタと髪から雨が滴り落ちるのを優しくタオルで拭った

雨愛も自分の頭にタオルを被っていた

「この前も実は火曜日に見かけたんだよね

でも私、手前の勝手口からいつも入ってるからこの前は気づかなくて……今日はお寺にちょうど入るとこだったから……」

「うん、火曜日に墓参りしてる、夏休みに父さんが亡くなって……」

「そうだったの……三ツ矢くんはいつも明るいし、笑ってるし、全然わからなかったけど時々外をよく見てるよね」

「俺……見てる?」

「あっ、そんなにいつも三ツ矢くんを見てるって訳じゃなくて……その、何ていえばいいんだろう」

「ぷっ、ごめん、言葉が足りなかった、俺、そんなに外ばかり見てる?って聞きたかったんだ」

雨愛は真っ赤になった

「……恥ずかしい……」