新学期から一週間が過ぎようとしていた



授業中、三ツ矢くんはぼーっと外を見ることが多いなと雨愛は感じていた

ある日の現国の授業中、教科書を読むのに三ツ矢くんが先生に当てられた

三ツ矢くんはぼーっとしていたのでどこを読むか解らず私に聞いてきた

教科書の文章を指差してあげると読み始めた


三ツ矢くんが読んだ内容は動物が母親を亡くして群れの中でも強く生きていくお話だった

(あっ駄目だ)

雨愛はこういう話に弱い……

すぐ涙が出てくる、雨愛はタオルハンカチを出し鼻に当てた

「はい、そこまで」


晴輝はお礼を言おうと隣を向いた

ハンカチで鼻をおさえていた雨愛は目に涙をいっぱいためて、いまにもこぼれそうだった

「ありがとう……」


晴輝が小声で囁くと雨愛はううんと頷いたと同時に涙がこぼれた

鼻をすすらないようにおさえていたハンカチは当然目には届かず、席に座ろうとした三ツ矢くんの手が雨愛の涙を拭った

読み終わって座るまでのほんの数秒の間、雨愛は時間が止まったようだった



座ってから三ツ矢くんは声をころして笑っていた

授業が終わり教室も賑やかになった



「びっくりしたよ、泣いてるから(笑)」

「ごめんなさい、本当に涙腺が弱くてあんな話はもう耐えれないの」

「まあ、俺の朗読力かな?」

「誰が読んでも駄目だと思う」

「何だよ俺の力じゃないのかよ、そこはそうだよって言っとくとこだろ?」

「そうなの?じゃあ三ツ矢くんのせいです」

「違う違う、俺のせいじゃなくて、三ツ矢くんの表現力とか……俺のせいって言うとさ俺が管野を泣かしたみたいじゃん」

「……わかった」

「管野はさ……」

「ん?」

「晴輝ー、こっちこいよ」

「わかった」

三ツ矢くんは席を立っていってしまった

何が言いたかったんだろう



学校帰り空を見上げながら曇りだな~と思いながら一人で歩いていた

まだまだ暑いから少し雲ってくれるとありがたい

(あれ?前を歩いてるの三ツ矢くんかな?)

電車通学って誰かが言ってたような気がする

声を掛けていいのかな、かけないほうがいいのかな……

迷ったが雨愛は少し歩くと右手に家の勝手口がある

結局そこから入って家に帰った