『悠馬も、涼太のこと大好きだよね』

『うるせー』

『あ、否定はしないんだ』




歩き出したとき、悠馬が再びポツリと呟いた。




『やっぱ梨花は、俺には振り向かないんだな』

『え?』




カチ、と何かが動く音がした。


聞き逃さなかった。できれば聞き逃したかった。
.......でも、それが悠馬の本心だとしたら聞き逃さなくてよかった。




『どういう.......』

『あー、やっぱ気づいてなかったか』

『だって、そんなの、』

『まあ、振り向いてほしいって思って行動してきてないからな。.......今言ったこと、忘れろ』




私は、その大きな背中を見つめた。
こうやって悠馬をよく見ることは、あまりなかったかもしれない。


光太朗とのときも、今も、ずっと悠馬は見守ってきてくれたのだろう。
そう考えたら、自分にもどかしく感じた。


悠馬は今まで何を思ってきたのだろう。
今、何を思っているのだろう。




『...忘れないよ』




呟くと、悠馬が振り返った。
そして『そーかよ』とふっと頬を緩ませて言った。


なかったことにはしない。
そんなの、1番悲しいはずだから。



さっきの何かが動く音。
"幼なじみ"という形を表していた私たちの関係が壊れる音。

でもそれはきっと、誰かが誰かを想った瞬間からヒビが入っていた。
想いが現れた瞬間、ただの幼なじみではいられない。


だけどそれが、私たちの"幼なじみ"の形。





『え、アイス溶けてるじゃん! ドロドロじゃん!』

『うるせ。文句あるなら自分で買いに行けばよかっただろ』

『涼太は何味にする?.......涼太?』

『.......わり。俺、用事思い出したから帰る』

『えっ』