『なんで言い出しっぺの咲希が買い出しに行かないんだよ』

『まあまあ、公平にジャンケンで決めたわけだし』

『こういうときアイツ、ジャンケン勝つんだよな』

『確かにね』




幼なじみでも、悠馬と2人きり、という状況は珍しかった。
それに加え、お互い自ら進んで喋るタイプではなく、沈黙が流れることが多かった。
でもそれは苦痛ではなく、むしろ心地いいくらいだった。


お菓子が詰められたビニール袋を提げ、ぼんやり悠馬の半歩後ろを歩いていると、悠馬がポツリと呟いた。




『梨花、アイツのことが好きなのか?』




突然の質問に私は固まった。

それもそうだろう。
クールな悠馬が、突然、恋愛の質問をしてくるなんて、全く想像をしていなかったことだったから。




『あ、アイツって?』

『アイツはアイツだよ。涼太だよ』

『あー.......』




振り返った悠馬と視線が交じる。
それはとても真剣なもので、嘘はつけなかった。




『...好き、だよ』




そう言うと、悠馬の眉がピクリと動いた。
それが不承知の意味だと思った私は、心配げに聞いた。




『軽いって思うかな.......?』




光太朗との関係をよく知ってる悠馬だからこそ、賛成してくれないかもしれない。そう思った。
切り替えが早いと思っているかもしれない。


答えが怖くて、思わず目を逸らした。




『思わねーよ』




相変わらず無表情だったけど、口調とは正反対の優しい声に、顔を上げた。





『涼太はまあ...良い奴だから。アイツなら、許せる。.......どの立場で言ってんだって感じだけど』




悠馬のその言葉は悠馬が思っている以上に嬉しかった。