「珍しいね、梨花から電話してくるなんて」

「いつも咲希が一方的にしてくるのがほとんどだもんな」

「ちょっと!」




翌日の、土曜日。
私は、悠馬も呼び出して咲希の家に来ていた。
話したいことがあったからだ。


用意してくれた飲み物に口をつけ、ひと息ついたところで、咲希が切り出した。




「で、どうしたの?」

「涼太のことで.......」




2人の顔が曇ったのを見逃さなかった。
それでも話して、協力してもらいたかった。




「.......涼太が理由もなく私たちを避けるはずない。でも今涼太が私たちといたくないのなら、せめて理由くらい知りたいなって」

「それを俺たちで探ろうって?」

「そう」

「それって、いいのか?」

「え?」

「だって、涼太が話したくないことだろ? それを俺たちが勝手に探っていいものなのか?」




悠馬の言う通りだと思った。
そんなの、失礼かもしれない。
だけど.......。




「じゃあ.......じゃあどうすればいいの? 私は涼太とこのままなんて、そんなの.......」




耐えられない、とは口に出せなかった。
口に出したらきっと、もっと辛い。




沈黙はしばらく続いた。
すると、吹っ切るような大きなため息が聞こえた。




「勝手に探って、涼太に嫌われても知らないからな」

「悠馬.......」

「あたしも、気になるしこのままだとムズムズするから、協力するよ」

「咲希.......。2人とも、ありがとう」




顔を上げると、2人は柔らかな笑みを浮かべていた。


.......あ、その顔。
私と光太朗に向けていた、見守るような笑顔。


それを見た私の胸は、きゅっと締め付けられた。


敏感な2人のことだ。
2人は、きっと私の気持ちに気づいている。
気づいた上で、協力してくれるんだ。


そのことは純粋に心嬉しい、だけど.......私も2人の想いを知っていて、だからどうしてもやるせなくなる。