「やっぱり、避けられてるよねぇ」
中庭でお弁当を広げる3人の中で、切り出したのは咲希だった。
「んなのは、わかってんだよ」
苛立ちを隠せていない口調は、悠馬。
咲希も悠馬も他クラスだけど一緒にお昼を食べていて、1週間前まではこの中に涼太もいたのに。
私が当たり前と思っていたものは、いつも消え去る。
ひらりとお弁当の包みにイチョウが舞い降りた。
もう、秋だ。
肌寒くなってきた。
涼太と出会って、2つの季節が過ぎ去った。
春と夏。
そこには、たくさんの思い出が詰まっている。
「私、飲み物買ってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
強い炭酸飲料でも飲んで、少しでもスッキリしたかった。
少しでも.......。
そう思って自動販売機に向かうと、涼太がいた。
目が合った。
バチリと惹きつけられるように。
「りょう.......」
名前を呼ぼうとして、目を逸らされた。
そして足早に去っていく。
ズキズキと痛む胸。
そのあと買って飲んだレモンソーダは、息切れしそうなほど強く泡を弾かせて、私の喉を通っていった。