「優理君、条約が破棄されたってことは、これから日本はどうなっちゃうの?」

『航が以前理科室でふざけて言ってた、ヒャッハー世界が現実味を帯びてきたってことかな』

「――それってつまり、核戦争待ったなしってこと?」

『ああ、下手したら第三次世界大戦も待ったなし、だろうな』

「そんな……嘘でしょ?」

『嘘で終わることを全力で願うしかないよ』


 まさか、冗談が本当になるなんて。

 いや、そもそも私だってスマホのない世の中になって欲しいなんて願ってしまったら、その通りになっちゃったし。

 自分で言った『核戦争』という言葉の重み、想像できる最悪の場面が一瞬頭の中に浮かんでしまって、ぞくりと震えた。


『日中平和友好条約……昭和五十三年に結ばれたんだったな。世間一般には友好の証として贈られたパンダの方が注目されたけど、これを結ぶまでには相当大変だったって習ったよ』

「条約を一方的に破棄って、悪いイメージしかないんだけど」

『一歩間違えば全世界から非難されるようなことをしてでも、国家体制の維持を優先させようとしてるんだろう』