恐れていたことが起こってしまった。
ハロウィンだけれど、このご時世、誰も仮装なんてしないし、ただの十月最終日という意識しかなかった十月三十一日のこと。
中国政府のナンバーツーである張首相が、官邸に戻る途中、拉致されたという。
使われた車が日本車だったこと、中国と日本は領海をめぐって攻防を続けていること、北朝鮮や韓国との関係が悪化する一方であることなどから、日本の組織の犯行ではないかと疑われているそうだ。
未だに安定しない電話でのやりとりは、特に国際通話だと途切れてしまうことも多いらしく、中国側は日本の外務大臣を呼び寄せようとした。
だけど、日本には外務大臣専用機がなくて、政府専用機もGPSが使えない今、要人を乗せて飛ぶことはかなりの賭けになってしまうという。
結局、中国とは繋がりにくいながらも首脳同士の電話会談という形をとったらしい。
途中で途切れてもすぐに対応できるように、三回線ほど繋げたままにした電話会談では、中国の国家主席からの問いかけに、日本の首相は「濡れ衣であり、第一日本人は渡航できない」と伝えた。
しかし、中国側からはこれら全てに根拠がないと一蹴されてしまったそうだ。