授業中に話していた松本君の発音は英語の先生より綺麗だ。でも、優理君の英語もちょっと聞いてみたいと思った。同じクラスではない優理君の音読や英会話を聞いたことがないから。

 来年度はクラス替えがあるけれど、きっと優理君や松本君とは違うクラスになってしまうだろう。国公立理系クラスに行くであろう優理君と松本君……おそらく一花も理系だ。

 私は、就職しなくてはならない。

 みんなと同じように進学したい。でも、これ以上おばあちゃんに迷惑をかけられない。

 今度は私がおばあちゃんの生活を支えなくてはならないのだから。

 うちの高校は四年制大学進学率が八割を超えている。残り二割の中でも就職希望者はほとんどいない。

 毎年数名、私のように家庭の事情で就職しか選べない子が、地元の信金や市役所、自衛隊といった方面に進む。

 私も市役所に勤められたらいいなと思いつつ、学校が出している「進路のしおり」を眺めていたことを思い出した。

 進路指導室も今は使えない。

 三年生の先輩方は今頃どうしているんだろう。

 推薦入試や就職試験の時期になっても、登校どころかいつ外出できるようになるのかさえわからないままだった。