晩御飯を終え、おばあちゃんがお風呂に入った時間帯に、家の電話が鳴った。とても古いタイプのプッシュホンで、停電でも使えることだけが売りであるかのような代物だ。急いで受話器を取った。

「はい、安本です」

 ほんの一瞬、間があった。

『守屋だけど、今、電話して大丈夫?』

「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」

 科学部の仲間である彼がかけてくるのは、ほとんどが部活関係の連絡だった。

『えっと、明日の社会の小テスト、範囲がちょっと変わるって』

「あ、そうなんだ……待って、今、メモするから」

 恐らく、一斉メールで配信されたであろう情報を、守屋君はまた私だけ知らずにいたら可哀想だと思って知らせてくれたのだろう。メモを終え、復唱し確認してから、彼にお礼を伝えた。

『いや、当然のことだから。それに今、俺も固定電話から掛けてるんだ。これからも何か連絡があったら、この番号に掛けるから。うちの番号も伝えとくよ……』

 守屋君の自宅の電話番号まで教えてもらった。ちなみに彼はお金持ちだけあって、病院用の回線のほかに自宅用として二つ回線があるらしい。そのうちの一つが守屋君の部屋でも使えると言っていた。

「ありがとう。助かったよ」

『それじゃあ、また明日』

「うん。また明日ね」