「もしもしっ! 安本ですっ!」

 いつもより緊張して、声が上ずってしまった。

『あ、えと、久しぶり、かな?』

「優理君!」

『もしかしたら、心配してくれた?』

「もしかしなくても心配してたよ!」

『航から聞いたよ。俺んちには直接電話できなくて、航に電話したらお母さんが勘違いしちゃって大変だったとか』

「そうなの! 妹ちゃん達まで大騒ぎになっちゃってね……」

 優理君の声のトーンはいつも通り。良かったと安堵した拍子に、受話器を落っことしてしまった。

『綺羅、どうした? 大丈夫?』

「大丈夫大丈夫。ちょっと動揺して受話器落としただけ」

 正直に話したら、笑われてしまった。

『そんなに動揺した?』

「うん。だって、毎日電話くれてたのに、急に来なくなったから、私何か変なこと言っちゃったかな、とか、もしかして優理君が病気になっちゃったのかな、とか悪いことばっかり考えたよ」