『俺、友達いないから。転校ばっかりしてて、友達になったと思ったらもう別れて。離れても友達だよ、なんて言ってもみんな俺のことは忘れてしまう。だから高校生になるまで友達はいらないって思ってた』

 
 その言葉を聞いて、私の胸の奥にも忘れかけていたような痛みが蘇る。

 小学四年生だったあの日、私は突然児童相談所に保護されたため、当時通っていた小学校には通えなくなってしまった。

 転校すると決まってからも、みんなにお別れを言うことすらできず、自宅に帰ることもできないままおばあちゃんの家に引き取られた。

 だから、仲良しだった友達の住所も、電話番号も、何も残っていない。

 お別れ会も、寄せ書きもない。

 私はあの小学校から突然消えてしまったのだ。

 転校を繰り返す松本君の辛さと、一度きりの転校だけれど挨拶もできないまま消えた私の悲しみは、きっと別のものだろう。だからあえて話題を少し変えた。