不安げな表情が私を見下ろしていた。

 私から見た彼は、お金持ちのお坊ちゃんで、何一つ苦労せずに何でも手に入る恵まれた家庭の子だ。頭もいい。両親から大切にされている。

 こんなに恵まれている彼がなぜ、そんなことを言うのか全くわからなかった。


 帰宅した私は、泣いていたことをおばあちゃんに気づかれないよう、すぐ晩御飯の準備に取り掛かった。今日は玉ねぎと卵の味噌汁にしよう。眼が赤いのは玉ねぎのせい。

「おばあちゃーん、晩御飯できたよ」

 奥の和室で横になっているおばあちゃんに声をかける。血圧が高く、膝が痛いおばあちゃんに代わって、主に私がご飯を作るようになってもうすぐ三年。

 親に捨てられた私を引き取ってくれたおばあちゃんに、少しでも楽をさせたいと思っているけれど、高校生の私にできることは限られている。

「ああ、ありがとう。それじゃあ、いただこうね」

「うん。どうぞ召し上がれ」

 貧しくても、周りから浮いた存在だとしても、ご飯があって命の危険がないだけ幸せだと思った。そして、こんな穏やかな日々が当たり前になったのだと思っていた。