それからきっかり三分後に、我が家の電話が鳴った。松本君がさっきより小さな声で話しかけてきた。

『今、自分の部屋のクローゼットの中。何で俺、こんなところで話をしてるんだろうな全く。家族はとりあえず黙ってリビングでラジオ聴いてる』

 この三分間で、松本君はお母さんと妹さんたちをどうやって黙らせたのだろうか。興味深いけれどあまり触れてはいけないと思い、自重した。


 私は今まで優理君と話した内容をかいつまんで語った。

 養子だったということを彼の口から初めて聞いたこと、家族のこと、将来のこと……。

 最後の夜の会話も思い出しながら伝えた。

 特に変わった様子もなかったと。

『なるほどね。安本さんとの会話が引き金になって、だんまりっていう訳でもなさそうだけれど、はっきりしたことは本人に聞かないとわからないな。今日はもう遅いから、明日俺から電話してみるよ』

「あ! そうだった。うち、キャッチホンじゃないの。もしかしたら今、優理君から電話がかかってきていたかも知れない。いつもの電話の時間だから」