心の底から感心しているような松本君の口ぶりに、私も改めて考えてみるともしかしたら、などと思った。

 だけどこれは絶対違うからと慌ててまた否定した。

「ごめん、真面目な話なんだけど茶化さないで最後まで聞いてくれる?」

『ああ、解った。ちょっとここ、外野がうるさいから自分の部屋から掛け直す』

 それは何だか申し訳ないな、と思ったけれど、松本君が掛け直すと言った意味が解った。

 電話の後ろがものすごく賑やかだ。何を喋っているのかはっきり解るほどに。

『ねえ、もしかしてお兄ちゃん、告白されてる?』

『きっとそうだよ! お兄ちゃん、彼女できた!』

『あなた達、お兄ちゃんの恋路を邪魔しちゃダメ。そっと温かく見守ってあげようね』

 そっと温かく恋路をお母さんに見守られる高校一年生男子の気もちを想像して、私の方が恥ずかしくて居たたまれなくなる。

『そういうことだから、あとで落ち着いてゆっくり話そう』

「うん。私が必ず出られるようにスタンバイしとくね」

『じゃあ、三分後に』