明日も君の声が聴きたくて


 あああもう噛んだし高校生なのに中学校とか言っちゃったし変に自己紹介しちゃったし、下の名前なんて呼んだことないから疑問形になってるし、子どもはみんな外出禁止なんだからいらっしゃって当然なのに……ダメすぎる私。

 変な汗が出てきた。受話器が手汗で滑る。


『航のお友達の安本さんですね。少しお待ちください』

 テンパっている私とは対照的に、松本君のお母さんは落ち着いた、でも若くて可愛らしい声で対応してくれた、ように思えたけれど。


 保留音のあと、はあはあ言いながら出た松本君が、もしもしの次に言った言葉に笑った。

『久しぶり。外野がうるさくてごめん。母親が興奮してるけど気にしないで』
 確かに、後ろの方から聴こえてくる。

『航に初めて女の子から電話がっ! そうだよね、父親似でこんなに男前なのに、今まで浮いた噂ひとつなかったのが不思議だったし。ああごめん、邪魔しないからゆっくり話していいよ』

「……楽しいお母さんだね」

『ああ。いつまでも気もちは若いらしい』