「明日もいい天気になりそうだな」
何を話していいのかわからなかったんだろう。守屋君が隣でそう呟いた。
「明日なんて来なくていいのに」
「それは俺が困るからやめて。明日、誕生日なんだ。祝ってくれよ」
「そっか。七夕が誕生日だって言ってたもんね。……じゃあ、スマホがない明日が来ればいい!」
「それはそれでみんな困るけどな」
「私はちっとも困らない! 持ってないってだけでハブられてバカにされてもう嫌だ!」
みっともないけれど、私はまた涙を流した。生まれた家も時代も間違えてしまったと思った。せめて平成の時代だったらここまでバカにされずに済んだかも知れない。
「俺も安本さんがハブられてるのを見るのは嫌だ」
「何で? 守屋君には関係ないでしょ」
「いや、他人事だと思えなくてさ」
「嘘。だって守屋君はお医者様の息子でお金持ちじゃない!」
彼も私のことをバカにしているのかと、涙を袖で拭いながら睨み上げた。私より頭ひとつ分ほど大きな彼の動きが止まった。そして呟いた。
「俺が今与えられている環境は、俺が努力して勝ち取ったものではない。そんなものはいつ変わるかわからない」