満月の真横に、また人工衛星の流れ星が現れた。

 あの人工衛星は、どこの国のものだろう。何の目的で打ち上げられたのだろう。

 ただひとつ、はっきりとしているのは、自国の人々の暮らしを快適にするために造られたものであるということ。

 それがあっという間に壊れ、燃え、宇宙デブリとなって地球の周りを漂うことになってしまったのだ。

 私が今、観ているのは、何十億年も前から変わらない静かな満月と、ほんの何年か前に打ち上げられ、道半ばで燃え尽きてしまった人工衛星の流れ星。

「優理君、ありがと。ちょっと気もちが楽になったかも」

『それなら良かった。あんまり気にすんな。あんなの偶然なんだから』

「うん。気にしないようにする。でも、もうあんな願い事はしないよ」

『そうだな。俺も気を付けよう』

 何に気を付けるのか聞こうとしたところで、すぐに『じゃあ、また明日』と電話を切られてしまった。

 毎回、優理君からかけてくれるのは、電話代の心配がないようにという彼の配慮だから、私からもっと話したいなどと言える立場にはなかった。

 松本君だったら、もう少し上手に話ができるのかも知れない。男同士だし。

 以前もらった電話番号に掛けてみようかと数日悩んでうだうだしていた。

 しかし、どうしても松本君の家に掛けなければと思う出来事が起こってしまった。