「じゃあ、優理君は何をお願いする?」

『そんなの決まってる! 綺羅の願い事が叶いますように!』

「私の願い事が絶対に叶うんだったら、優理君の願い事の分は無駄になっちゃうんじゃない?」

『ぐっ……痛いところを突かれた。ほら、二人で願えば効果は二倍ってこともあるし』

「そっか。じゃあ、二倍の力で『スマホが使える安定した世界に戻りますように』ってお願いしよう」

『ああ。きっと今、世界中の人もそれを願ってる。何十億倍になるんだろうな……』

 受話器を肩と耳の間に挟みながら、両手を組んで空を見上げた。

 こんなことを願った自分がいけなかったんだろうかと、心の奥に引っかかっていた願い事。

 単なる偶然だったとしても、周りを不幸にしてしまうような願い事はするべきではなかったのだと、ずっと後悔していた。

 きっと私が気にしていることに気づいている優理君が、冗談めかしながらも私の気もちを軽くするために、あえてこの話を持ち出したのだと思った。