『うん。斜め右下に向かってね』
「何か、こんな状況でも同じものを見てるんだなって思うと、ちょっとほっとするね」
『……俺も、同じこと考えてた。今までは毎日同じ空間で部活してたのにな』
「たった二か月前の話なのに、もう懐かしいよ」
『そうだ、あの日の綺羅の願い事、本当になったんだよな』
あの日、自分の境遇に苛立ち、スマホのない世の中を願ったことを思い出す。
「いやあの、私の願い事が叶ってしまったのは単なる偶然だよ! 私が望んだのはこんな世の中じゃないし!」
むきになって否定したら、くくくっと笑いながら優理君が話を続けた。もうこの話題は避けたいのに。
『じゃあさ、今、満月に願い事をするとしたら、何を願う?』
「そんなの決まってるよ! 元の世界に戻りますように!」
『それ、絶対に叶うよ。あの時と同じようにね』
今度は私が笑う番だった。
どこからその根拠のない自信が湧いてくるのだろう。
