今日もいつもの時間ちょうどに、優理君から電話がかかってきた。


『ねえ、綺羅。今日は何の日か知ってる?』

 未だに優理君から名前を呼ばれると耳の奥がこそばゆいような感覚になる。

 照れ隠しに私は一生懸命言葉を繋げる。

「今日? うーん、何だっけ。誕生日はお互いもう終わったし、一花の誕生日は来月でしょ。松本君の誕生日は確か冬だったような……」

『残念。誕生日とは関係ないよ。そこから外って見える?』

「ちょっと待って。ベランダに出たら見えるけど、電話の線が……」

 以前、おばあちゃんが長期間寝込んでいた時、おばあちゃんの部屋でも電話が使えるように、かなり長い線を使っていた。

 けれど今は邪魔だから、その線をまとめていた。

 それを伸ばして、また電話機を移動できるようにしてみよう。

 これならベランダまで届きそうだ。

『待ってる。出たらきっと気が付くよ』

 優理君の優しい声が、少し耳から離れた受話器越しに聴こえる。