それからおばあちゃんが帰ってくるまでの少しの間、一花ととりとめのないおしゃべりをした。
一花は今の生活がまるで、アンネ・フランクのようだと言っていた。
外に出られず、情報網も遮断され、電気や食糧を節約しながら暮らす毎日。
大人が外へ出ていくのを、私達はこっそり窓から見送ることしかできない。
確かに、屋根裏部屋で隠れて暮らすアンネのようだ。
だけど、決定的に違うことが二つあった。
一つは、見つかっても強制収容所送りにはならないこと。
そしてもう一つは、世界中の人達が同じような苦労を強いられているということ。
人種も国も性別も宗教も超えて、文明に頼り切った生活を送っていた国のみんなが同じ流れ星の瞬く空を見上げ、苦難を乗り越えようとしているのだ。
誰も好きで第三次世界大戦を起こそうとしている訳ではないのだと、私は信じていた。
日本国民の誰もがそう信じて疑わなかった。