「多分、手首の骨が折れたんだろうってお母さんが言ってた。パンパンに腫れちゃってさ……」

 一花は下を向いて、もう一度麦茶のグラスを持った。その手が震えていることに気づいて、私は一花の顔を直視できなくなる。

「どうしよう。一樹、このままだと動けなくなっちゃう」

 一花の膝の上に、涙がぽたりと落ちた。

「頑張ったんだけどな。……裏目に、でちゃった。お母さんも一樹も泣いてさ」

 ダメだ。

 話を聞くだけで私も泣けてしまう。

 何度も遊びに行った一花の家。元気いっぱいの一花のおばさんと、いつも人懐っこい笑顔を浮かべていた一樹君。三人が泣いている姿がありありと頭の中に浮かんでしまって、視界がぼやける。

「……昨日の夕方、車で病院に行ったんだ。帰って来ないし、連絡もできないんだと思う」

 しゃくり上げながら、ゆっくり話す一花の言葉を待つことしかできなかった。私は一花の隣に移動して、背中をさする。自分の気もちがうまく言葉にならないから。

「私、もう、疲れちゃった。いっそのこと、今すぐ核弾頭飛んで来て直撃してくれないかな」

 私の肩に頭を乗せて、一花はぼろぼろ泣いた。