高校生以下の子どもが外出禁止となって以来、私は外へ出ていない。
多分、みんな怖くて出て行くことができない。
周りの目があるのはもちろんのこと、実際にいつ核弾頭が飛んでくるかわからない。とにかく子どもは家の中、病院以外は外出禁止だと言われているから、それをみんな忠実に守っているのだと思う。
中にはこっそり出歩いている子もいるかも知れないけれど、友達との連絡が固定電話以外取れない今、ひとりぼっちで外へ出るのは本当に危険だ。それなのに、一花はすぐ近所とはいえ、ここまで来たのだ。よほど伝えたいことがあったのだろう。
「ごめん、こんなのしかなくて」
約一か月ぶりに会えた一花がとても深刻そうな顔をしていたから、甘いものでも食べさせてリラックスしてもらとうと考えた。だけど買い物に行けるのがおばあちゃんだけで、ガソリンの供給が滞っているせいで配達もなし、という状況のため、ティーバッグで作り置きした麦茶と、キャラメルしか出せない。
ちなみにキャラメルは、低血糖でふらつくことのあるおばあちゃんのために、以前私が買っておいたものだ。
