「今日もありがと。そろそろ切らなくちゃ」

『わかった。最後にお願いがあるんだけど』

「なあに? あ、今日聞いた話は内緒にするから大丈夫だよ」

『まあ、それもなんだけどさ。俺のこと、名前で呼んで欲しい。実の親からもらって唯一残ってるのが、名前だけなんだ』

「うん、わかった。でも何か照れるなあ……。優理君、でいい?」

 言ってから、自分で赤面しているのが感じ取れた。ほっぺが熱い。

『言われるのも結構照れるなあ……俺も、安本さんって何か他人行儀だし、下の名前で呼んでいい?』

「いいよ。あんまり気に入ってない名前だけど、安本っていう苗字もなんかこう、安物と一字違いでちょっと嫌だし。安物なのに煌びやかな名前で、アンバランスでしょ?」

 何だか照れてしまって、やたらと早口でまくし立てたような気がする。

 だけどこれは本心で、俗にいうキラキラネームの元祖みたいな名前も、苗字も、私はどれも嫌だと思っていた。

『……綺羅のことは安物だなんて思わないよ』