『俺の今いる環境は、とても恵まれているとは思う。だけど、それは俺がたまたま運よくここにもらわれたってだけ』
「もらわれた?」
私は実の親から見捨てられて、児童相談所へ送られたあと、おばあちゃんに『引き取られた』から、『もらわれた』と表現する守屋君の言葉に違和感があった。
『うん。特別養子縁組ってやつで、戸籍上は守屋家の長男になってるけど、見る人が見れば、養子だってことが解る』
「詳しいんだね……私、自分の戸籍なんて見たことないよ」
『俺はこっそり見た。パスポート更新の時に』
海外旅行どころか飛行機にすら乗ったことのない私には、パスポートなんて縁のないグッズだった。だけど、恵まれた家に居ながらも守屋君は色々気になって、こっそり見ずにはいられなかったのだろう。
「何か、色々大変だったんだね」
『まあね。でも一番大変だったのは父と母じゃないかな。俺を養子にしてから、実の子が二人も生まれたんだから。小二の時、弟が生まれたんだけど、俺の赤ちゃん返りが酷かったって母は今でも言うくらい。恥ずかしいけど、俺の居場所がなくなるって思ったからさ』
