こうして、全国の高校生までの子どもは学校へ通うこともできず、そのまま夏休みに入ってしまった。そして今も夏休みだというのに、やっぱり外出禁止のままだった。


 世界中の政局は不安定なまま何の進展もなかった。

 むしろ悪化していると言った方がいいかも知れない。

 新聞とラジオのニュースによると、各国の通信手段まで破壊されているため、電話会談もまともにできないそうだ。

 かつて、衛星だけに頼るのは危ないからと、海底ケーブルを作っていたはずだったけれど、それを維持するのが大変だからと老朽化したケーブルをほっといたらしい。

 便利なものだけに頼るのは危ないと、大人はいつも言っていたのに。

 首脳または外務大臣同士が直接会おうにもGPSが使えないため航空機は全て運休、政府専用機を使おうにも今時GPSを使わずに操縦できる能力をもつパイロットはいないそうだ。

 かといって海路も安全とは言えない。

 こちらもGPSで位置を確かめながら航海することができない上、他国の空母や潜水艦からの攻撃に遭ったらと考えると、逆に海路は空より危険だという見方もあるらしい。

 島国日本の外交は今、切羽詰まった状況になっているというのに、どうやって首脳会談を行えばいいのか見当もつかないそうだ。