親から『あんたさえいなければ』と言われて見放され、友達からも忘れられ、貧乏だと憐れみの眼で見られる毎日。

 自分の力ではどうすることもできない環境を恨んだ。自分で何とかなることは努力した。

 塾に行けないし、参考書も買ってもらえないけれど、常に良い成績を取ることでおばあちゃんから見捨てられないようにした。

 手のかからない良い子でいなくては、また児童相談所へ戻されてしまうという恐怖感が抜けない。

 私にとって安心して生活するために必要なものはスマホじゃない。『保護者』と『家』さえあればいい。そう思って生活してきたら、周りからすっかり浮いた存在になっていた。
 

 消えてしまいたい。
 せめて、この子達に気づかれる前に、この場から遠ざかりたい。
 遠回りして職員室へ行き、部室である理科室のカギを借りて身を潜めた。


 理科室の奥にある準備室に入り、カーテンを閉め丸椅子に座ってテーブルに突っ伏した。涙腺が限界突破する寸前だったが、ここまで何とか持ちこたえたのは私にもプライドがあるから。

 黒いテーブルの上には、片付けるのを忘れたらしいプレパラートとピンセットが無造作に置かれていた。何の標本を作りかけていたのかなど、もうどうでもいい。埃まみれのテーブルの上で、制服が汚れるのも気にせずに私は泣いた。