【 二章 第八の月~迎え火の夜~ 】


 あれからたった四週間で、世界は本当に変わってしまった。

 
 七月七日に起こったあの人工衛星の連鎖的な爆発のことを、人々は『カルマ(業)の火』と呼ぶようになった。

 この災害の原因は、太陽フレアによるものであり、どこかの国の軍事ロケットによる攻撃などではない、と発表された。

 この発表にほっと胸を撫でおろしたのは、平和でお気楽な日本人くらいだったらしい。

 公式発表を信じられない諸外国の政治家、将軍、指導者……ありとあらゆるえらい人が、他国を攻撃するチャンスだと考え、世界中がギスギスしはじめた。

 残った衛星を各国で協力して使おう、などという話は夢物語だと一蹴され、それぞれの国が頭を抱えつつ、他国との情報戦を優位に進めようと躍起になっているそうだ。

 結局、高高度の人工衛星は半分程度が壊れ、これから先も壊れた人工衛星が巨大な宇宙デブリ(ゴミ)となって、地球の周りを飛ぶとのこと。

 数年後には残った人工衛星も壊滅状態になると言われている。


 空には毎晩流れ星が見えた。

 最初こそ珍しくて飽きずに眺めていたけれど、今はそれを見るのも怖くなってきた。

 もしかしたらそのうちの一つが、核弾頭として日本に落ちてくるかも知れないから。