ああ、やっぱりそうだったんだ。

 昨日の守屋君の『俺が今与えられている環境は、俺が努力して勝ち取ったものではない。そんなものはいつ変わるかわからない』という言葉。

 心の奥で引っかかっていた私は、松本君の言う『色々抱えてる』がそれに関係しているのだと予想した。


「うん。何かありそうな感じはしてたんだけど、私は詳しく知らない。私から聞くべきではないと思うし」

「そうだな。本人が喋ったら、その時は親身になって聞いてやって。多分安本さんならいい理解者になれると思うから」

「そう、かな。私じゃ力不足だと思うけど」

「いや、安本さんがいいと思うよ。俺こそ力不足だ」

「うーん、松本君にそう言われちゃったら断れないよ」

 あえておどけて言う。多分その話は家族に関する深刻なものだと思ったから。その間にも松本君は色々検索を続けている。


「重いなあ。スピードも検索結果も重い。それでも繋がるだけまし、かな。多分これからは線が繋がっているものしか使えなくなる」

 私も画面を見たけれど、読み込むのに時間がかかっている。

「じゃあ、待ってる間に。安本さん、これ、うちの電話番号」

 松本君がポケットから生徒手帳を出して、そこに張り付けていた付箋紙に固定電話番号を書いてくれた。