「全校生徒の皆さんに連絡します。本日、緊急職員会議のため、部活動禁止となりました。総下校時刻は四時です。繰り返します……」


 六時間目が終わり、帰りの会の最中だったけれど、校内放送が流れた。

 理由も説明されない『職員会議』のために、部禁というのは初めてだった。

 斜め後ろの席に座る松本君の方を見たら、彼も私の顔を見て、それから人差し指を一本、唇の前に出した。内緒、ということらしい。私はもちろんそのつもりだった。


 下校の前、一花が私の教室の前で待っていてくれた。

「ごめん綺羅、今日は私、先に帰って郵便局に行ってくる。お金、今ならまだおろせると思うから」

「うん。気をつけてね。ばいばい」


 一花は看護師のお母さんと弟との三人暮らしだった。

 お母さんは多分仕事だから、一花が今できることをしようと考えたのだろう。大慌てで下校する一花の後ろ姿を眺めていたら、声を掛けられた。松本君だった。


「あのさ、今から優理の家に行くんだけど、安本さんも来る?」

「行く!」


 そんなの、行くに決まっている。守屋君の家ならPCを有線で繋ぐことも可能だ。おそらく松本君もそういう目的なのだろう。