「実の親から愛情を受けられなかった俺達ですが、育ての親である父さんと母さん、それと綺羅のおばあちゃんには、たっぷり愛情を注いでもらいました。

 今度はその愛情を社会に還元することを、彼女への愛情と共に誓います。

 彼女はまだ、自分に自信がありません。

 こんなに可愛くて、気立てのいい、料理上手な努力家なのに、です。

 実の親からも捨てられてしまった自分には、何の価値もないのだと信じて成長してしまったからです。

 実は俺にもそれが半分位当てはまります。

 今でこそ、俺って何でも器用にできちゃうから、なんて言って調子に乗っていますが、小さい頃は違いました。

 泣き虫で、常に人の顔色を窺う子どもだったのです。

 それを、二歳の綺羅が変えてくれました。

 彼女から頼りにされ、すごいと褒めてもらい、笑いかけてもらうことで、自分にもいいところがある、ということに気づかされたのです。
 
 だから今度は、俺がずっと彼女の自信を取り戻すための訓練をします。理学療法士の彼女に負けないくらい、熱心にやるつもりです。

 天国にいる綺羅のおばあちゃんが、安心できる家庭を築きます。

 父さんと母さんのような家庭を作ることが、俺達の目標です」



【完】