松本君は慣れた手つきでPCを動かしている。

 彼のお父さんは高校の教頭先生で、北海道内をあちこち転勤していたと言っていた。少し前には海外生活も経験したそう。だから英語も得意だ。

 うちの学校の秀才と言えば、お医者さんの息子の守屋君か、この松本君だと言われている。この二人のおかげで、私も一花もテスト対策はバッチリだ。


 私と一花が準備室からプレパラートが入った箱を持ってきたところで、松本君が切羽詰まった声で私達に声をかけてきた。

「日本のGPS、今はもうほとんど使えないらしい。衛星を使った放送……ええと、テレビと衛星放送、有料チャンネル、みんなもうすぐ使えなくなるだろう。あと、気象衛星も壊滅的」

「冗談でしょ?」

 一花が叫んだ。

「静かに。冗談じゃない。ガチなネタだよ。人工衛星がぶつかり合って、宇宙にでっかい破片が飛び散ってるんだって。それがまた他の衛星にぶつかって壊れてっていう大連鎖が起こってるそうだ」

 松本君の後ろから、PCの画面を覗き込んだ守屋君が呟いた。

「地球の周りで飛んでる人工衛星、壊滅状態ってことか……」

「そうなるだろうな。日本だけじゃなくて世界中の人工衛星が巻き込まれてる」

 松本君が深刻な顔つきで答えた。

「ってことは、テレビもネットも世界中で使えなくなるの?」