やや緊張した面持ちで、マイクの前に立つ優理君。

 私はそれを横で聴く。


「本来であれば、新婦から両親への手紙、というのが一般的なのでしょうが、一昨年、新婦は唯一の肉親であった祖母を亡くしています。

 そこで、私が養父母に向け、感謝の手紙を書きましたのでどうぞお聞きください」


 そう言って、優理君は紙を見ずにご両親へ語りかけた。

「父さん、母さん。

 今まで、血の繋がっていない俺を育ててくれてありがとう。

 両親が本当の父親・母親ではないということは、この家にもらわれた時からわかっていました。

 だけど、それを知ってショックを受ける父さんと母さんは見たくなかった。

 今、ここでその話をすることも、とても迷いました。

 だけど、ここにいる皆様に知らせたかったのです。

 たとえ血の繋がりのない他人であっても、愛情をもって子育てできる立派な両親に育ててもらえて、俺はとても幸せでした」