当時保護されていた未就学児が、私と「ゆうくん」だけだったこともあり、私たちはとても仲良く遊んでいた。

 一緒にご飯を食べ、こっそりグリンピースを残した私達を、先生は叱ってくれた。

 好き嫌いを直すために叱られたのは、それが初めてだった。

 私のお気に入りの遊びは、糸電話。

 先生に作ってもらった糸電話を、ずっと大事に持っていた。

 そして「ゆうくん」と毎日糸電話で仲良く喋っていたことも思い出した。


「綺羅、これ、覚えてる?」

 優理君が手のひらに乗せていたのは、お星さまがついたヘアピン。

 小さな子供がよく使う、パッチンと留めるタイプのものだ。

「……うん。お気に入りだったけど、なくしちゃったんだよね」

「ごめん、俺が持ってた」

「そうだったんだ」

「綺羅が家に戻る前の日、帰りたくないって駄々こねてたんだ」

「覚えてる。帰りたくない、ここでゆうくんと遊ぶって言った」

「その時に落としていったんだ。明日返そうと思ってたのに、今俺が綺羅に会ったら、綺羅がまた帰るのを嫌がるからって、会わせてもらえなくて、返せなかった」

「それで、ずっと持っていてくれたの?」

「うん。会えたらいいなって。綺羅もきっと会いたいって思ってるはずだって思ってたんだけど、すっかり忘れられてたし」