「……ゆうくん、ですかー?」

 恐る恐る、尋ねてみる。

 すると、優理君の顔がぱっと明るくなった。

 今まで見たことのないような、子どもっぽい、やんちゃな笑顔。

 口元に紙コップを当てて、私に耳に当てるよう、ジェスチャーをする。

『きらちゃん、やっと会えたね』

 糸電話を机の上に置き、優理君は私の方へ歩み寄ってくる。


「ゆうくん、だったんだ」

「そう。結構ヒント出したつもりだったんだけどな」

「六年かかって、やっと答えが出せたって感じ?」

「遅いよ。ずっと待ってた」



 母親からネグレクトを受けていた私は、何度か児童相談所に保護されていた。

 初めて保護されたのは、二歳の時だったという。

 あまりにも私がアパートでぎゃんぎゃん泣くから変だと、隣の住人が通報したそうだ。

 私はその時、ご飯を与えられずアパート内に放置されていた。

 保護された時にはやせ細り、しばらく家には戻せないと言われたらしい。


 ちょうどその時、同じく児童相談所にいたのが「ゆうくん」だった。