明日は優理君が出発する日。

 つまり、私の運命の日は今日。

 お昼過ぎ、こちらからは久しぶりに優理君へ電話をかけた。


『綺羅から掛けてくれるなんて、珍しいな。明日俺出発なんだけど、槍が降ってきたらどうしよう?』

「それはきっとないから心配しないで。それより、今、暇?」

『うーん、暇といえば暇。暇じゃないといえば暇じゃない』

「どっち!?」

『綺羅次第、かな。俺もちょうど綺羅を誘おうと思ってたから』


 以心伝心、だろうか。もしかしたら優理君も私と同じことを考えていたのかも知れない。

 だとしたら、好都合だと思った。

 好都合なはずなのに、心がずきずきした。


「私を誘おうとしていたって、どこへ?」

『俺達の思い出の場所と言えば?』

「えっと、理科室?」

『そう。正解。顧問の先生の了解は得ているから、二時半に理科室集合、いいね?』

「うん。わかったよ」

『それじゃあ、また後で』


 電話を置いて、深いため息をついた。

 そういえば、もう、制服を着て行く必要はないんだ。

 これで、優理君に会うのも最後かも知れない。