こんな時間、しかもクリスマスイブにバスに乗っているお客さんは、私しかいない。
駅からほんの少し進むと、お客さんはみんな降りてしまったので、大型バスが私だけの貸し切りバスのようになってしまい、何だか申し訳ないなと思いながら景色を眺めていた。
ようやく、バス停が見えてきた。
ステップから降り、顔を上げて驚いた。
「優理君!」
「メリークリスマス」
「あ、メリークリスマス」
照れたように笑って、ダッフルコートのポケットから手を出した。
小さな箱が握られている。
「これ、どうしても渡したかったから」
「私に? いいの?」
「もちろん。開けてみて」
赤い包装紙を丁寧に開き、中にあった箱のふたをそっと開けてみた。
すると、中には小さな星のモチーフがついた、ヘアピンが見えた。
「可愛い……ありがとう」
「どういたしまして。気に入ってもらえた?」
「うん! この大きさなら学校につけて行ける」
「それなら良かった」
「あ、あのね、私からは……何も今手元にないんだけど」
本当は、家に本を一冊、用意していたのだけれど、取りに戻っていないので渡せない。