「多分、通信衛星にも壊れたものがある。だからネットが重いんだ」

「どうしてニュースで言ってくれないの?」

 こんな大事なこと、早くみんなに知らせてくれないと困るのに。ネットが重いということは、この情報だって広く伝わっていないだろう。

 私の質問に対して、守屋君は小さな声で教えてくれた。

「パニックになるから、だろう。父はこの情報を入手して即、夜中なのに叔父さん呼び出して、夜間金庫から現金おろして、休止中だった電話回線復活させて、燃料と医薬品かなり多めに発注かけてた。病院は常に最悪の事態を想定しつつ、どんなことがあっても患者を守らなきゃ、だってさ」

 素直に凄いと思った。

「さすが守屋医院。うちも何かした方がいいよね?」

「うん。俺が大人だったら、まずは手元に現金を持っておくね。通信衛星が使えなくなったら、ATMも電子決済も全部使えないから。そろそろそれに気づいた人達が銀行で並んでるかも」

 大変だ。私もおばあちゃんにすぐ知らせないと。

「ごめん守屋君、スマホ貸して! おばあちゃんに知らせたいの」

「いいけど、繋がらないかも」

「試してみる」