四人部屋なので、他の患者さんのご迷惑にならないよう、小さく歌う。

 もろびとこぞりてをそっと歌っている時のことだった。

 おばあちゃんのまぶたが、かすかに動いたような気がした。

 もう一度、少しだけ大きな声で呼びかけてみた。

 すると、またまぶたが動いた。

 これは、間違いなく私の呼びかけに反応しているのだと思った。


 急いでナースコールを押し、もしかしたら意識が戻っているかも知れないと伝えた。

 すっかり顔見知りになった看護師さんが、すぐに病室へ来てくれて、おばあちゃんの様子を見守っている。

 私はもう一度、耳元で呼びかける。

「おばあちゃん、綺羅だよ。もう朝だし今日はクリスマスイブだから、起きてね」

 私の声に反応するように、やっぱりまぶたがぴくりと動き、それからゆっくりと開いた。

「おばあちゃん、わかる?」

 うっすらと目を開けたおばあちゃんは、わかるよ、と言いたげな眼で、一度まばたきをしてくれた。

 クリスマスイブの奇跡が起きたのだと、看護師さんも病室のみんなも喜んでくれた。