破壊され、宇宙デブリとなった人工衛星の回収が今月から始まった。

 アメリカが打ち上げた『お掃除ロケット』が試運転を開始したというニュースを、つい先日ラジオで聴いた。

 低高度用の人工衛星も、各国で次々と作り始めているらしい。

 低高度用のロケットは現在、政府機関だけではなく、民間も参入して開発しているので、こちらは順調だという明るいニュースもあった。

 つい二か月前まで、核兵器におびえていたのが嘘のように、いまは世の中に少しずつ安心と希望が増えているのを感じる。


 世の中は明るくなってきているのだけれど、私の家は未だに侘しいままだ。

 なぜなら、おばあちゃんの意識がまだ戻らないから。

 学校帰り、毎日病院へ寄り、おばあちゃんに呼び掛ける。

 手足をマッサージしながら、耳元でおばあちゃんの好きだった歌を歌う。

 もしかしたら、びっくりして目を覚ますんじゃないかと思って、こんなことも囁いてみた。

「おばあちゃん、あのね。私、市の奨学生になれたの。だから、保護費と合わせたらちゃんと生活していけるから大丈夫!」

 だけど、おばあちゃんは眠ったままだった。