頭の中で話したいことを一度整理して、それからゆっくりと話し始める。

「今日の遅刻もそうだけど、私の事情をみんなが知っているわけじゃないから仕方がなかったと思うよ。私は自分のできることを精一杯やっているだけ。私がすべきことは、おばあちゃんの看病だと思ったから」

 いつの間にか、教室中がしいんとしていた。

 こんなに注目されながら話すのは苦手だけれど、仕方がない。

 六時間目が始まる前に、言いたいことはみんな言ってしまわなくては。

 私は言葉を続けた。

「私ね、小四の時、母親から育児放棄されて保護されたの。体が弱いおばあちゃんが無理して引き取ってくれたお蔭で、高校に通うこともできたし、有難いと思ってる。母親に捨てられた私を助けてくれたおばあちゃんが倒れちゃって、すごくショックだった」

 クラスの女子が、戸惑ったような表情を浮かべている。

 ちょっとだけからかうつもりだった、スクールカースト最底辺の私が、カースト上位の松本君を味方につけて、お涙頂戴ストーリーを語り出すなんて思ってもみなかったのだろう。