「え? 松本君……?」
教科委員の彼女と、他の女子がぽかんとしている中、松本君はまた、黒い炎を背後にまといながらにやりと笑った。
「ああ、みんなの家には固定回線、ないんだっけ。俺の家はほとんどFAX専用回線として使ってたけどね。守屋の家は病院だから、ありとあらゆる通信手段を非常事態に備えて持ってるって訳。で、安本さんの家はおばあちゃんがずっと大事に固定回線を使ってた、と」
ね? と、松本君に黒い笑顔を向けられて、私はどぎまぎしながらも一緒に笑う。
松本君の眼が、私に訴えかけている。
『言われっぱなしで終わるつもりか?』と。
今までの私だったら、それで構わないと思っていた。
私にとって何よりも大事なことは、今の環境を守ることだったから。
だけど、せっかく築いてきたその環境が壊れかけていること、しかも見下されているというタイミングの悪さが、私のなけなしのプライドに火をつけた。
「ものの価値は時代によって変わるっていうこと、あんまり実感した経験はなかったんだけど、今回改めて思ったよ。有線って大事だよね、松本君?」
