教室へ入ってみると、みんながスマホを触りながらぶつぶつ言っていた。

 昔は学校へスマホを持ち込むことは許されていなかったらしいけれど、今はみんな休み時間などに使っている。

 授業中に使っていたら先生に取り上げられるのだけれど、それでもこっそり使う子が絶えない。みんなも一花と同じく、口々に重い、繋がらないと騒いでいる。

「ね、サイトに繋がらないでしょ?」

「うわ、最悪。エラーばっかりで全然使えないんだけど」

 やっぱり、一花の言った通りだった。殺気立ってるみんなの様子をぼんやりと眺めたあと、まだいない守屋君を探すために教室を出た。

 靴箱を確認すると、既に外靴が入っていた。校内にいることがわかったので、そのまま理科室へ向かう。きっとここに居るはず。

 理科室のドアをそっと開けると、守屋君がタブレットPCで何かをしているのが見えた。

 ドアの音に反応した彼が、視線を私に向けた。眼鏡の奥に、切れ長の綺麗な瞳。いつもの彼だ。

「おはよう。昨日はありがと」

 うまく笑っておはようが言えた。いろんな意味でありがと、と言ったつもりだった。

「安本さん、おはよう。他に何か言うこと、ない?」

 そう言われてはっとした。そうだった!

「守屋君、お誕生日おめでとう!」