松本君の表情、というより雰囲気が怖い。

 気のせいだろうか、彼の後ろに黒い炎が見えた気がした。

 まさか何かを企んでいるのではないだろうか。

 だとしたら、彼は敵に回すと怖い。

 多分、このクラスの誰よりも怖い。


 私の心配をよそに、松本君を見ていない彼女は喋り続ける。


「ねえねえ、カルマの火でみんながスマホ使えなくなった時、どう思った? ざまあみろって思ってたんじゃない?」

 彼女の声はだんだん大きくなってきて、他の女子を呼び寄せるようにヒートアップした。

「ねえ、どう思ったの? みんなも自分と同じ環境になって、嬉しかった?」

 彼女と仲の良い友達も会話に加わる。

「私達、何も連絡取れなくてすっごく寂しかったんだけど、安本さんは今までも連絡取ってないから、あまり変わらなかったんでしょ?」

 そこまで言われて、さすがに言い返すべきかと思い、私が口を開いた瞬間。


「安本さんと俺、よく固定電話で話してたから、別に寂しくなかったはず。あと、B組の守屋とは毎日話してたんだろ?」

 誰にも言わないつもりでいたことを、みんなの前で松本君に暴露されてしまった。