一花は制服のポケットからピンクのスマホを出して、首をかしげている。

「どんな風に?」

「動画が止まったり、データのダウンロードがスムーズにできなかったりするんだよね」

「ふうん。それっていつから?」

「うーん、朝起きたらそうなってた」

 そう言われて、はっと思いついた。もしかしたら。

「それ、もしかしたら私のせいかも。昨日『スマホがない明日が来ればいい』なんて言っちゃったんだよね」

 そう告白すると、一花は一瞬で真顔になって、それからそっと呟いた。

「綺羅の意思でそんなことが決まっちゃうなんて、もしや神……って、んなわけないでしょ! もういいよ。多分帰りまでには直ってるからさ」

 そう言って、一花はあははと笑いながら私のリュックをばしんと叩いた。

 違うクラスの一花は、昨日の私と女子達とのいろいろを知らない。いや、今までいろいろあったということに気づいているのだろうけれど、変わらずに付き合ってくれるのが嬉しかった。私と一緒にいたら、一花まで陰で色々言われるかも知れないのに。

 それからは、もうすぐ始まる夏休みのことや、テストが返却されて凹んだことなど、他愛のない話をしながら学校へ向かった。