おじいちゃんとは、私が生まれるずっと前に離婚したと聞いた。

 まだお母さんが小さかった頃のことだそう。

 だから私はおじいちゃんを写真でしか見たことがない。しかも、おばあちゃんとおじいちゃんの結婚式の写真。

 まだ若くて可愛いおばあちゃんと、古い写真でもはっきりと判る、男前なおじいちゃんを見て、おばあちゃんはきっとおじいちゃんを顔で選んだんだと思ったっけ。

 そして、お母さんの連絡先、おばあちゃんは知っていたんだ……。

 私を育てられないと言って以来、お母さんが私の前に現れることは一度もなかった。

 だけど、おばあちゃんが残してくれた手帳には、すぐ隣の町の住所と、携帯の電話番号があった。

 会おうと思えば、いつでも会える距離に住んでいたなんて。それでも一度も会いに来てくれなかったんだと知って、胸の奥がずきりと痛んだ。

 手帳を確認している私の隣で、一花のおばさんが肩を抱いてくれた。

「綺羅ちゃん、今は眠っててもいいよ。まだ眠たいでしょう? 何かあったら、おばさんが聞いておくから。ここ、おばさんが勤める病院ではないけれど、知り合いの看護師さんや先生がいっぱいいるの」