パジャマ代わりに着ていたスウェットの上にジャンパーを羽織り、入院用ボストンを持って、私も救急車に乗り込んだ。

 必死に呼びかけたけれど、やっぱりおばあちゃんは目を覚まさない。

 救急車は市内で一番大きな病院へ向かうことになった。


 待合室で治療を受けているおばあちゃんの様子を気にしながら、ボストンバッグの中身を確認した。

 もしも足りないものがあったら、入院用自動販売機へ買いに行かなくてはならないと思ったから。

 だけど、今すぐ必要なもので足りないものは何もなかった。

 もしかしたら、おばあちゃんはこうなる日が来ることを予想していたのではないだろうか。そう。感じてしまうほど、用意周到で驚いた。

 だって、入院セットが入ったボストンバッグの中には、おばあちゃんが入院するために必要なものの他に、私が付きそう時に使うであろう現金とハンコ、いざとなったら私が頼るべき相手の電話番号を記した手帳も入っていたから。

 その中には、札幌にいるおばあちゃんの妹、おばあちゃんの別れた旦那様……つまり、私のおじいちゃん、それと、私のお母さんの連絡先もあった。