消防署の方が、励ますように話してくれる。

「わかりました。今、救急車が向かっています。あと三分程でそちらに着きます。玄関のカギを開けて、受話器を置いてお待ちください」

「はい……よろしく、お願いします」


 まもなく、救急車が市営住宅に到着した。

 私はおばあちゃんの意識が戻らないこと、高血圧で薬を飲んでいることなどを救急隊員に伝えた。

 救急隊員が、おばあちゃんの処置をしていると、玄関のチャイムが鳴った。

 一花と一花のおばさんが走って来てくれた。

 寒いのにパジャマに裸足でスリッパをつっかけて。

「一花……おばさんも……」

 二人の顔を見たら、また涙が溢れた。

「救急車が来たから、どこかなって思ったら綺羅の家だったから……」

「綺羅ちゃん、おばさんも一緒に病院へ行くわ。保険証……医療券かな? とにかく、病院にかかるときに受付に出すカードか紙はどこ? それとお薬手帳もあれば持って行こう」

「この袋に……全部入ってます。あと、押し入れに入院セットが……」

 おばあちゃんの部屋の押入れを開けて、すぐ手前にある黒いボストンバッグを出した。

「ああ、ちゃんと用意がしてあるのね。いざという時、そのまま持って行けるようにって」