跡継ぎにはならなくても、医学部へ進学してお父さんのようなお医者さんになりたいという、はっきりとした目的のある優理君と、とにかく収入を得ることしか考えていない私。
何だか自分がお金のためだけに生きているようで、カッコ悪いと思って話せなかった。
明日からようやく学校が再開される、という日の早朝、物音で目が覚めた。
ガタガタッという大きな音が、トイレの方から聞こえた気がした。
すぐに布団から飛び出して、私はトイレへ走る。きっとおばあちゃんがトイレでつまずいたのだと思った。
骨折してしまったら大変だから、転びそうなものは全て片付けていたはず。
トイレマットも、スリッパもやめた。こまめに掃除しておけばいい。それよりおばあちゃんの安全が大事だった。
「おばあちゃん、大丈夫?」
トイレのドアを勢いよくノックした。
返事がない。もう一度声をかけてノックしたけれど、しいんと静まり返っている。